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「時をかける少女」。

2006年07月23日 14:02

【公式サイト】http://www.kadokawa.co.jp/tokikake/

観て参りました。いやもう周囲の評価が良すぎるのでチョット捻くれ気味な感じで観に行ったのですよ「どんなシーンでも泣かないぞー」とか意固地になったりして。結果――、


ご め ん 、 ラ ス ト 泣 い た 。


序盤のドリフコントのような展開(特に何回も同じ事を繰り返すトコ)に笑って、中盤からの青春展開にムズムズして、最後には涙腺刺激されまくり。何とか2回までは堪えたけど、最後の時間跳躍のシーンで遂にポロリと涙が出て後は止めどなくダバダバー、と(苦笑)。
しかし最後はみんな万事解決して何事もなくまた三人楽しく過ごしてしまうか、と思っていたけど。ラストを敢えて『別れ』を再び描くトコに喝采。最初の突然な理不尽な別れと、最後の全てを知った上での希望ある別れ、その違いだけでこんなに物語がキレイに引き締まっています。
やはり切ない『別れ』のシーンが「時をかける少女」には似合いますな。みんな、あの夏を過ぎて大人になっていく。永遠のジュヴナイルと云うか。
あと映画板で書かれていましたけど、あのタイムゲージが遠目で見ると二人を結ぶ赤い糸に見えると云うトコロは「あー、成る程ねぇ」激しく肯いたり。そして魔女叔母さん(和子さん)の飾っている写真とラベンダーには原作を知っているとニヤリとしますな。

で、観終わった後サントラを買おうと思ったら見事に売り切れ。
一瞬クラウザーさん顔になりそうでした。タイムゲージをレイプせんばかりに。

いや、実に素晴らしいアニメ映画――と云うより青春映画でした。これは是非口コミで拡がっていって欲しいなぁ。あと、もう一回は観に行きたい。出来れば映像と音響設備が良い劇場で。DVDは例え1万円でも買っちゃうでしょう。

で。
ココから以下に書くのは観終わった後の私の妄想が爆発しまくって、ついカッとなって書いてしまった。あのエンディングの後日談SSなんかを。
一応、隠しておきますので、映画本編に特別な思い入れがある人や、「あのラストで十分だ!」と思っている人は読まない方が良いかもしれません。いや、マジで勢いで書いただけだから、本編との齟齬が目立ちまくりなので。

それでも良い方のみ「続きを読む」をクリックして下さいませ。
(あとルビタグを使っているのでキチンとした表示で読むにはIEが向いているかもしれません)

『一匹の蝶が羽ばたいた結果、地球の裏側で竜巻が起きる』
                       ――カオス理論の一説より



   BUTTERFLY_EFFECT



 懐かしい夢を、視た。
 生まれて初めて視た蒼空。白い入道雲。少し痛くて強烈だけど生命を感じさせる初夏の陽射し。
 その中にポツンと浮かぶ白点。誰かの叫ぶ声。でも陽射しがとても暑くって――でもとても気持ち良くて、何を喋っているのか聴こえない。白点はどんどん大きくなってくる。
 それが球体になり、
「――!」
 それが野球の軟球(ボール)だと気付いて、
「――ぁきッ!」
 球の表面の凹凸が鮮明に視えるまで近付いて、
「――千昭ッッ!!」
 俺の名前が呼ばれているのと気付くのと同時に、鈍い衝撃。蒼空に視えない筈の星を、俺は視た。

 眼が醒める。冷たい寝台の感触が夢の世界から俺を無慈悲に引き戻す。
 視界に拡がるのは白。白い天井。白い壁。白い床。ひたすら白い部屋。寝台と簡素な机と簡易便器。それだけしかない生活感の無い部屋。いや、これは部屋じゃなくて――牢獄だ。そして俺はその牢獄に入れられた罪人なのだ。

     ◆ ◆ ◆

 半年前。
 俺はこの世界に帰還(かえ)ってきた。遥か昔の時代から。時間跳躍器機(タイム・クラッカー)を使って。
 時間跳躍(タイム・リープ)
 俺の時代に於ける最高の発明であり――最悪の兵器、だ。
 何故、最悪の兵器なのか?
 考えてみればいい。もしある場所で戦争があってAという国が勝利してBという国が敗北する。しかしそれをもう一度やり直せるとしたら? B国がA国との開戦直前まで時間跳躍する。無論、相手の戦術も動きも予測済み。攻略本片手のSLGより簡単だ。
 だけど相手もそれが解っている。そして今度はA国がまた時間跳躍をする。つまりは鼬ごっこだ。それによって戦局は拡大した。色々な国を巻き込んで世界規模になった。

 ――このままではお互い滅びる迄終わりはない。

 そんな当たり前の結論に辿り着いたのは、世界の人口が二桁減った辺りの頃だった。全く馬鹿な話だ。
 そしてお互い時間跳躍をして自分達を陥れないかと国と国が勢力と勢力が個人と個人が、疑心暗鬼になった。自分が他人の時間跳躍によって改竄された人生を歩んでいるのではないか?――誰もが考える疑問だ。
 他人への疑心。それは家族、夫婦、兄弟、恋人達の間でも起こった。
 終戦の翌年から新生児の出生率は前年の半分を割った。今も下降し続けている。あと百年足らずで人間自体が絶滅危惧種(レッドデータ)として載るかもしれない。
 だからここ数年、時間跳躍者には厳しい規制が掛けられている。それこそ百科事典並の数千数万の項目が。それを破った者は厳罰が処された。
 俺もそれは解っていた。――いや、俺は解っていたが『もう一つの未来(、、、、、、、)』の俺は解っていなかったらしい。ある一人の少女――紺野真琴に喋ってしまったのだ。時間跳躍の事。俺の時代の事。どこ迄話したのかは解らない。
 と、言うかこの話した事実自体が真琴の時間跳躍に因って『無かった事』にされたのだと俺は楽観的に考えていた。
 ――しかし現実は甘くなかった。
 俺が時間跳躍で戻って、部屋の扉を開いた時に数名の時間監察官達が待ち構えていた。そして有無も言わさずにこの部屋に放り込まれた訳だ。

     ◆ ◆ ◆

「……野球がしてえ」
 空しく呟く。
 半年前に土の匂いがするグラウンドで遊んでいたのが遥か遠くの日のように思えた。いや、実際百年以上も前の事なのだけど。
 野球。
 あの時代に行って初めて憶えたゲーム。なんか自分の性に合っていたのかとても面白かった。ひたすら無心で白球を追いかけたり、グラブの感触やバットでジャストミートした時の高揚感。何とも言えなかった。
 最初は『あの絵』を見れなくてクサクサしていた俺にあの二人が教えてくれたっけ。無愛想だけど妙にお節介な男――津田功介と放っておくと何をしでかすか分からない危なっかしい真琴。

 ――ああ、想い出した。あの夢の光景。

 俺が初めて野球をした時だ。功介が投手(ピッチャー)で真琴が打者(バッター)。俺は少し後ろで守備。グラブの使い方もよく解ってなくて真琴が、
「ただそこに立って、ボールが来たら捕るだけでいいよ」
 と言ったんだっけ。功介のヤツはそれを聴いて、
「あー、無駄無駄。俺の球は絶対打てっこねぇよ」
 と肩を竦めて見せる。真琴は風船みたいにふくれていたな。
 そして三球目の内角高目をひっぱたいてその打球は蒼空高く舞い上がって、それを茫乎(ぼんやり)と視ていた俺は――、

 鼻をさすってみる。
 あの時、すっげぇ鼻血出して大変だったな。真琴はオロオロするし。功介は自分の病院へ連れて行こうとするし。何より俺自身が驚いていたし。思わず苦笑が漏れる。
 ――そうか。俺はもう一つ想い出した。
 あの時から、真琴は俺の事を『間宮くん(、、、、)』じゃなくて『千昭(、、)』と呼んだのだ。

     ◆ ◆ ◆

 それから更に数週間が経過した。どれだけ経ったのかは外の状況が把握出来ないので解らないが、恐らく三週間ぐらいだろう。
 部屋に入ってくる気配がして、俺はあの無表情な時間監察官がまた尋問に来たのかと思って顔を上げる。鼻腔に僅かな花の薫り――これは、紫薫衣草(ラベンダー)だ。
 其処にいたのは意外な顔だった。
「――初めまして、チアキ・マミヤ君。私の名は……言わなくて知っているかな?」
 穏やかな微笑みを浮かべる老紳士。ああ、よく知っているさ。教科書にも出ているし。授業中に髭を描いてやった事もある。
 時間跳躍理論を完成させた最大の功労者。そして最悪の悪夢の創造主。
 ケン・ソゴル博士だった。

     ◆ ◆ ◆

 無機質な尋問室か、僅か数秒で判決が下される裁判室に連れて行かれるのかと思っていたが、予想に反して俺は博士と共に完全防弾防菌の車に乗せられていた。僅かな振動すら感じさせずに動く慣性制御された最高級車(エクスペンシィヴ)の中には俺と博士の二人だけ。互いに言葉もなく向き合っている。
「……俺に、何か用があるのですか?」
 沈黙に耐えきれずに、口を開く。博士はただ穏やかに――まるで愛しい孫を見るかのように――頬笑んでいる。その皺だらけの口元がふっ、と動く。
「……バタフライ・エフェクト(、、、、、、、、、、、)
 静かに呟いた。そして一呼吸置いて、
「ご存じかな?」
 と訊いてきた。俺は即座に肯く。
 バタフライ・エフェクト。
 時間跳躍者(タイム・リーパー)ならまず一番最初に教えられるカオス理論(セオリー)の言葉だ。
 スペクトルの連続性、ストレンジアトラクタ、リアプノフ指数・分岐……まぁ専門的な知識はさておくとしてもそれによって判定されたカオス現象には数々の特徴が発生する。
 自己相似。単純な数式から、ランダムに見える複雑な振る舞いの発生。初期値のごく僅かな相違が、将来の結果に甚大な差を生み出す――これがバタフライ現象(エフェクト)だ。
 時間跳躍者は常にこの現象の危険性を考えて行動しなくてはならない。
 僅かな行為が世界そのものを危険晒す事だってあるのだから。
「……それが、何か?」
 最大限の勇気で声の震えを抑えた心算だったが、俺の声はまるで他人の声のような響きを伝えた。博士は皺の奥にある細い瞳に俺の顔を映す。
 心臓を鷲掴みにされるような感じ。息が苦しくなる。
 その時、静かに音も無く車のドアがスライドした。
 目的地に着いたのだ。

 到着地は見た事のない建物だった。
 ――いや、この建物は、どこかで……?
 随分と永い年月が経っているであろう石造りの柱、日本風な構造の屋根。確かに見た事がある。しかも遠い昔ではなく、ごく最近に。
 気が付くと博士が入り口に立ち、こちらを見詰めていた。俺の視線に気付くと静かに顎で「入りなさい」と指し示す。
 俺は階段を昇って入口へ向かう。博士は俺の数歩前を歩き始めた。
 入ると大きな勾配(スロープ)を描く階段が見えた。古ぼけた、だけど懐かしい感じのする絨毯を踏み締める。空気は僅かに黴臭い。
「この建物は戦争以前より建っていてね」
 前を歩く博士が話し始める。
「あの世界を焼き尽くすかと思われた業火の中ですら、生き残った。……正に奇蹟だよ」
 階段を上がりきり、展示フロアへ続く長い廊下へ進む。
「……いや、奇蹟ではないな」
 博士の足が止まって、振り向いた。
「ある一族が……ある人物(、、、、)が正に命を懸けて護ったのだよ」
 だけど俺は博士の顔を見ていなかった。俺の視線はその後ろの物に注がれていたのだから。
「…………そんな」
 フラフラと歩き出す。でも床の感触は遠くにあるように感じる。白昼夢を見ているような。あの牢獄で何度も見た、あの夏の日々の想い出。触れてしまったら砕けて残酷に傷付ける硝子細工のような。
 指先を伸ばす。――冷たい硝子の感触。

 そして硝子の向こうに――、一枚の絵が在った。

 かつて俺が一目見る為に時間跳躍してまで焦がれていた、あの絵が。
 映像資料(データ)なんか比べものにならないぐらいの美しさ。衝撃。鮮烈さ。――そして、暖かさ。四つの世界を掻き抱く慈母の表情。その口元には画像データには無い僅かな、本当に僅かな微笑みが宿っているような気がした。
「この絵はある人物の子から孫へ、その孫へと代々受け継がれていたものだ」
 俺の横に博士が立つ。
「たった一枚の制作者すら解らない絵だ。芸術的価値すら無いような絵だ。……だが、ある人物はこの絵を護り続けた」
 慈母の微笑みが滲んでいく。頬から熱いモノが零れていく。幾つも、幾つも。
「……この絵を、子孫達へ受け継ぎたい。そして『約束(、、)を果たしたい(、、、、、、)。その一心でね」


 ――追いついたね。一生懸命走って来たよ、私。


 絵が囁く。遥かな時を越えてきた、伝言を。
「……バカ。本気で追ってきたのかよ。無茶しやがって、無理しやがって」
 本当にやっちまいやがって。何をしでかすかわかんねぇ女だったけど、ここまで莫迦だったとは。
 絵の前で俺は膝をつく。参ったよ。降参だ。あの時言い損ねた言葉を今なら簡単に言えそうな気がする。

「……俺、お前の事、好きだったんだぞ。バカ真琴」

 そんな俺を優しく見詰めて、
「君は……今までにない最高のバタフライ・エフェクトを起こしたのだよ」
 博士は肩を叩いてくれた。

     ◆ ◆ ◆

 その後の事は博士が詳しく教えてくれた。
 あの『時を越えてきた絵』はある現象を引き起こした。
 絵を見た人達が次々と無許可の時間跳躍をし始めたのだ。それも自己欲の為ではなく、今は世界中から焼失した美術品達を護る為に。勿論、自分達の時代に持ち込む違法行為ではなく、その時代時代へその身を懸けて護っていった。
 その結果、数々の絵画や彫刻に文学、失われた音楽が世界に充ちた。疑心に満ちていた人々の心が潤されていった。それを護った尊い心と共に。

 そして、明日各国の首脳達は全ての時間跳躍技術の廃棄宣言をする。
 真琴が護ってきた、あの絵の前で。

 建物――かつての美術館の屋上に俺は立っていた。
 世界は再び動き出そうとしている。誰も予想しなかった方向へ。
 空を見上げる。有害気化物質(スモッグ)に溢れたこの空もいつかあの夏の蒼空を取り戻す日がくるのだろうか。

「当たり前でしょ、バーカ」

 また、アイツの声が聴こえた。苦笑が漏れる。
「……さて、マミヤ君」
 背後から博士の声。
「間接的とは云え、君の起こした行為は重大な時間管制法違反だ」
 そうだ。確かに俺のした事は赦されるものではない。あの絵の所為で命を失った人だって多数いるのだ。
 でも――、

「……解っています。どんな処罰でもお受けします」

 俺の心はとても静かで充たされていた。あの絵を見る事が出来た。真琴の想いも受け取れた。もう怖いモノなんて、何もない。
「…………そうか、では」
 皺だらけの掌が、俺の腕に重なった。
 同時に何か異物の這入(はい)ってくる、感触。この感覚は知っていた。
 まさかと思い視線を向ける。


 左腕の手首に『01』の表示が描かれていた。


「は、博士。これは……」
 驚きで呆けた俺の顔が可笑しいのか、顔の皺を更に深くして博士が口を開く。
「世界各国の首脳が決めた判決だ。君の存在は明日の時刻をもって完全に抹消される。戻る事は赦されない。世界最後の時間跳躍器機をもっての永久追放(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)だ」
 つまり……どの時代へ行こうがお咎め無しって事。
「どうだね。……本当にヒドイ判決だろう?」
 そう言って遂に我慢出来なかったのか、カラカラと笑う博士。
 ――ああ、全くヒドイ判決だ。
 俺は頭を抱える。アイツにまた逢った時、何て言えばいいんだよ、と。
 いや、云うべき言葉は決まっているのだ。
 一礼すると俺はゆっくりと歩き始めた。屋上の先にあるの空の向こうへ。
 歩調を早める。逢いたかった、無性に。加速していく、もっと――もっと!

 アイツは俺を見て、どんな顔をするかな。
 多分、ハァ?て顔になって、次に幽霊を見たように驚いて、泣きそうな顔になって――ぐちゃぐちゃな笑顔を見せてくれるに違いない。
 俺はそんなアイツの顔を見て、こう言ってやるんだ。

 そして、明日に向かって飛翔()ぶ。あの夏の蒼空(そら)が瞳一杯に拡がる。


 ――『ただいま』とね。


                          ...NO END SUMMER

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コメント

  1. なゆた | URL | -

    小説、読みました。
    ガン泣きしました。

  2. 西山英志 | URL | 8enCDdAU

    >なゆたさん
    どうもありがとうございますー。
    いや、勢いだけで書いてしまったので不評を買うのではないかと心配していたので、こんな反応されると嬉しいですな。どうもです。

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