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「インビクタス/負けざる者たち」。

2010年02月13日 14:12

【公式サイト】http://wwws.warnerbros.co.jp/invictus/

「硫黄島からの手紙」「グラン・トリノ」と傑作を立て続けに魅せてくれているクリント・イーストウッド監督の最新作ですが……正直言いますと「グラン・トリノ」ほどは泣けなかったな、と。でも良質感動作には違いなく。

まずこの映画の見所はモーガン・フリーマン演じるネルソン・マンデラの器のデカさ、政治手腕の巧みさかと。冒頭の大統領就任当日に官邸を出て行こうとするアフリカーナー(アフリカ系白人)の職員達を呼び留めたり、SPに白人スタッフを採用したりするトコロも良いのですが、一番唸ってしまったのは南アフリカ代表ラグビーチームでありアパルトヘイトの象徴とも云える「スプリングボクス」のエンブレムやウェア、チーム名を変更しようとする議会での大統領の言葉ですね。

「諸君らは確かに勝った。だからこそ卑屈な復讐に走るべきではない。それは過去白人達がやって来た行為と同じで、その時我々は卑屈な復讐心に『負ける』のだ」

こんな言葉だったと思います。観てから1週間以上経過しているからスッカリ忘れてるけど(汗)。正直かなりグッときました。選挙前は政権交代政権交代と叫んで、実際は私欲に走りお粗末な政策しか出来ない民主党とか見ているとネェ(嘆息)。

ひたすら『赦し』の人なのですよね、マンデラ大統領は。30年も牢獄に繋がれればどんな優しい人物でも復讐に駈られるはずなのに、ひたすら『赦し』てしまう。映画の中ではマンデラ大統領が30年ものどんな不当な牢獄生活を送らされたのかは描かれていません。終盤に既に解体されたロベン島刑務所をスプリンボクスの主将・ピナールが訪れるトコで僅かに描写されるだけ。それが凄くリアルで重い。長々と辛いシーンを見せられるより、僅か数分の牢獄の映像だけで色々と想像出来てしまうンですよね。あの優しい笑顔の奥にはどれだけの不屈の心が在ったのか。
そんな『赦し』の思想で南アフリカを復興させようとするマンデラ政権ですが、黒人白人の人種間確執は根強く、政策は遅々として進まない。そんな中、ラグビー・ワールドカップが南アフリカで開催される事になり、マンデラはピナールと一緒にラグビーを通じて人種の壁を越え国民の心を一つにする為に奮戦をします。
これがスッゴク地味(笑)。もっと劇的な変化をもたらす事件とかを入れたら、物語として盛り上がったかもしれませんが、ひたすらリアルに描いていく。この辺は「現実にあった素晴らしい話を誇張して真実を捩じ曲げてしまうコトは、この奇蹟を起こした人々に対して失礼だ」と云うイーストウッド監督の姿勢が見えてくるようで。

(※以下、終盤のネタバレですので反転処理で観た方のみお読み下さい)




そんなマンデラやピナールの努力で人々の心は変わっていこうとする。でも、最後の『壁』だけが崩せないでいる。決定的なソレを崩せるのはスプリングボクスが優勝する事だけ。ピナール達は、自分達が勝つ事によって『何かが変わる』事を信じ死力を尽くし、マンデラは客席で祈る。
ここの緊張感はナカナカのモノです。肉体がぶつかり合う音とか、かなり痛そうだし(笑)。ラグビーに詳しい方が見てもこの辺はかなり良く出来ているらしく。ルールとか良し知っていたらもっと面白く観れたのだろうナァと少し悔しい感じもしたり。
そして、不屈の魂を持つ者達の勝利。沸き上がる歓声。スタジアムから、テレビの前から、ラジオの向こう側から。この一瞬確かに奇蹟は起きます。試合に勝つ事の奇蹟ではなく、国民全てが手を取り合い抱き合い心が一つになると云う奇蹟が。
ジラすだけジラして最後の最後で観たかった最高シーンを持ってくる、あざといまでのイーストウッド監督の手腕ですが、正直このシーンはチト涙がジワッと出て来ましたよ。

試合が終わり、路上で歓声を上げて喜ぶ国民を車中で眩しそうに眺めるマンデラ大統領の顔は「ああ、コレが見たかったんだ」と云う一番優しく満足げな表情。加えて運転席でも喜ぶSP達。最初の頃は黒人白人と乗る車も別々にしていたのに、今は一緒に乗って一緒に笑い合っている。このシーンも本当に素晴らしかった。
これからの南アフリカはまだまだ人種間確執や諸問題は残るだろう。でも、そんな時に、この奇蹟の一瞬を想い出せれば、何でも乗り越えて行けそうな……希望溢れるラストでした。



●総合評価 75点
感情を揺さぶる起伏の激しい感動作ではなくて、色々と「自分も変わらなければ」と想いながらズンッと心に残る良作ですな。出来ればマンデラ大統領と1995年のラグビー・ワールドカップの情報を入れておくと、深く楽しめたり。あの試合前の『飛行機』も事実だったのにビックリですよ(笑)。
2019年に日本でもラグビー・ワールドカップが開催されるそうですし、是非ルールを覚えて観に行きたいなと思ったり。

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