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「ディア・ドクター」。

2009年10月10日 13:56

【公式サイト】http://www.deardoctor.jp/

作品自体は6月公開ですが、ウチの周囲では何故か先日追加上映されたので、今更ながらの感想を(笑)。

人間の持っている無意識の優しさと愚かさ、山間の小さな農村と云う地方コミュニティに潜む温かさと怖さを描いた秀作。

監督である西川美和さんは前作「ゆれる」が話題になって、私も「そんなに話題になるのなら早めに観ないとナァ」と思ってはいたのですが、そのままズルズルと未見放置していて今回初めて西川監督作品を観たワケですが、女性監督らしい繊細な描写で不器用な男の優しさを表現した素晴らしい作品だナァと感嘆の溜息をついた次第で。

総人口千人足らずの小さな農村に住む医師・伊野は村長に請われて3年前から療養所に赴任し、今では村人達から絶大な信頼を得ていた。そんな中にやってくる今時の若者らしい研修医青年・相馬。地方の農村と云う厳しく突拍子のない医療環境の中で献身的に働く伊野。そんな姿を間近で見て相馬は次第に共感と尊敬の感情を抱きはじめる。だが、伊野には知られてはならない『秘密』を持っていて――と、云うのが物語の大筋なのですが、この『秘密』については大半の人は序盤で大体薄々と気が付くと思います。6月に公開されて随分経っているのでネタバレしますが、伊野は医師免許を持たない、しかも十分な技術・知識すら持たない『偽医者』なのです。
そんな設定を聞くと「そんな突拍子もない秘密なんて現実ではありえねぇよ」と思う人が大半かもしれません。が、この「ディア・ドクター」では伊野がどのよう経緯で『偽医者』になったのか、そして3年もの間、誰にもバレずに務めてきたのかその『謎』が緻密に描かれていきます。ヒョットしたら現実でもありえるのではないか、と思えるぐらいに。

伊野は何故『医者』になったのか。普通に生活していたら得られない莫大な報酬の為か? 医師になれなかった己の自己満足の為か? それとも、村人を見捨てられない優しさなのか?
村人は何故伊野を――『医者』を求めていたのか。何もかもが足りない村の為か? ただ、心の拠り所の為か? それとも、ただ優しいだけの小心な男の弱さにつけ込んだだけなのか?
心優しい偽医者とそれを知っていながら頼らざるを得ない村人達との心温まる、でも後ろめたい関係。しかし、そんなナァナァな関係もある事件で崩壊を迎える。しかもその事件は伊野のその優しさ故に招いてしまったワケで。
嘘を嘘で塗り固めた犯罪のお話なのに、とても切なくそして笑顔が漏れてしまうラストはナンとも云えない余韻を感じさせます。
私の過去観た邦画ではこーゆー物語は大抵、その偽医者と村人との関係を感動的に美化して浪花節演歌な展開になりそうですが(苦笑)、この映画ではそんなコトは無く、冒頭とラストに流れるブルースの音楽のように静かに苦い結末を迎えます。某アニメの影響ですが「ブルースって音楽は喜びも優しさも怒りも哀しみも全てゴチャ混ぜにした音楽なんだ」と云う言葉がありますが、この映画も正にブルースみたいだと思ったり。誰が正しいワケでもでもない、誰も間違っているワケでもない。みんな少し優しくて少しエゴイストだっただけ。

配役的には主演の伊野役の笑福亭鶴瓶さんがホンマに良い演技をしてくれます。つかテレビ出ている時のまんまなのでアレを演技と云うべきなのか(汗)。お人好しそうな笑顔でフト見せる哀しげな視線(エレベーターのシーンとか、食べ残した夕食を観察するシーンとか)は時々ハッとさせられますね。今度の日本アカデミーでは色々と賞が貰えるかも。
脇を固める配役陣もシッカリしていて個人的には薬問屋の斎門役の香川照之が憎めない小悪党っぽくて良かったり。あとは相馬役の瑛太は少し前は苦手な若手俳優さんだったのですが、この映画でチョット評価が上がったり。

しかし、冒頭でも書きましたが本当に男(特に30~40代のオッサン世代)の心理を細やかに描いていて、引き込まれて、色々とシンクロ率が上がってしまう映画で御座いました。今後の西川監督作品にも期待したいトコロ。


●総合評価 80点
書き忘れていましたが映像的な部分では、風で動く草叢や稲穂が効果的だったな、と思ったり。静かな農村の『嘘』を暴く強い風がやって来るみたいで。
因みにDVDは来年1月に発売だそうで。レンタルも同時だと思うので気になった方は是非観て貰いたかったり。
【関連AAリンク】1/8発売 DVD「ディア・ドクター 初回限定盤」

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