2009年08月05日 23:35
【公式サイト】http://s-wars.jp/
実に、実に素晴らしい『家族』と『つながり』の物語。
今世間に溢れているネットを介した『つながり』は僅か数年で色々と私達の生活に恩恵を与えてきた。買い物、生活の上での手続き、現実世界なら出会えるはずのない数十キロ、数百キロ離れた人々と何の垣根もなく話し合ったり遊び仲間になったり出来る。だが、ある事件を境に一秒前の優しい善意が一秒後には傷付ける悪意に替わり、何でも出来ると思っていたら実は何も出来ないとても脆く危ういモノだと気付いてしまう。
そんな誰も信じられない、何も出来ない時に手を差し伸べてくれたのは、側にいる友であり、好きな人であり、そして――人類史上最古の『つながり』である『家族』だった。
本当にこの映画は私の心の琴線に触れまくります。真っ青な夏空に白い入道雲。古く大きな日本風民家に濡れ縁の朝顔。鬱陶しいと思いながらも優しく暖かい親戚達とみんなで囲む飾り気無い食卓。今では珍しいけれど、私の子供の頃には当たり前だと思っていた故郷の風景。もう書き連ねているだけでも涙が出そうに(苦笑)。
そんな暖かな現実世界の田舎風景と賑やかなネット世界『OZ』の光景、それぞれの楽しさと危うさと力強さをテンポ良く交互に見せてワクワクさせてくれます。まぁ、コレが頭の固い邦画作品なら「ネットなんかよりやっぱ現実世界を大事に!」とか説教臭い内容(若しくはネット嫌いマスゴミの思考誘導)になりそうなのですが、この「サマーウォーズ」ではネット世界での利点や良さ肯定して、その上で現実世界の『家族』や『つながり』の素晴らしさを描いているのがスゴク良いのですよね。もう今の世の中、ネット無しには生きていけないンですし。
人によっては同じ細田守監督作品である「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」をまんま焼き直しただけだと酷評しているようなので、私もその辺が気になって「ぼくらのウォーゲーム!」を観てみましたが。
……いや、これ全然別物じゃん(汗)。少なくとも自分はそう思ったり。
確かに人工知能がネットワーク世界を崩壊させていく演出とかは「サマーウォーズ」と似ているかもしれませんが、根底に流れる作品のテーマとかは全然違うような気がするのですが。「デジモン」ではネット世界と現実世界の温度差ギャップで笑わせて、見えない『危機』を描いているだけだし。元々人工知能が世界を混乱させること自体、手垢のつきまくった展開なのに。
個人的にはコレは細田監督作品の『味』とか『お約束』みたいなモノだと思っていますが。白い鳩とか犬とかスローモーション二挺拳銃とかウンザリするぐらいの長台詞とか、そう云った類の。
以下、各登場人物や印象に残ったシーンや台詞等のネタバレを含んだ感想になりますので、観終わった方のみ「続きを読む」からご覧下さい。
まだ観てない方は読まないようにお願いします。
実に、実に素晴らしい『家族』と『つながり』の物語。
今世間に溢れているネットを介した『つながり』は僅か数年で色々と私達の生活に恩恵を与えてきた。買い物、生活の上での手続き、現実世界なら出会えるはずのない数十キロ、数百キロ離れた人々と何の垣根もなく話し合ったり遊び仲間になったり出来る。だが、ある事件を境に一秒前の優しい善意が一秒後には傷付ける悪意に替わり、何でも出来ると思っていたら実は何も出来ないとても脆く危ういモノだと気付いてしまう。
そんな誰も信じられない、何も出来ない時に手を差し伸べてくれたのは、側にいる友であり、好きな人であり、そして――人類史上最古の『つながり』である『家族』だった。
本当にこの映画は私の心の琴線に触れまくります。真っ青な夏空に白い入道雲。古く大きな日本風民家に濡れ縁の朝顔。鬱陶しいと思いながらも優しく暖かい親戚達とみんなで囲む飾り気無い食卓。今では珍しいけれど、私の子供の頃には当たり前だと思っていた故郷の風景。もう書き連ねているだけでも涙が出そうに(苦笑)。
そんな暖かな現実世界の田舎風景と賑やかなネット世界『OZ』の光景、それぞれの楽しさと危うさと力強さをテンポ良く交互に見せてワクワクさせてくれます。まぁ、コレが頭の固い邦画作品なら「ネットなんかよりやっぱ現実世界を大事に!」とか説教臭い内容(若しくはネット嫌いマスゴミの思考誘導)になりそうなのですが、この「サマーウォーズ」ではネット世界での利点や良さ肯定して、その上で現実世界の『家族』や『つながり』の素晴らしさを描いているのがスゴク良いのですよね。もう今の世の中、ネット無しには生きていけないンですし。
人によっては同じ細田守監督作品である「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」をまんま焼き直しただけだと酷評しているようなので、私もその辺が気になって「ぼくらのウォーゲーム!」を観てみましたが。
……いや、これ全然別物じゃん(汗)。少なくとも自分はそう思ったり。
確かに人工知能がネットワーク世界を崩壊させていく演出とかは「サマーウォーズ」と似ているかもしれませんが、根底に流れる作品のテーマとかは全然違うような気がするのですが。「デジモン」ではネット世界と現実世界の温度差ギャップで笑わせて、見えない『危機』を描いているだけだし。元々人工知能が世界を混乱させること自体、手垢のつきまくった展開なのに。
個人的にはコレは細田監督作品の『味』とか『お約束』みたいなモノだと思っていますが。白い鳩とか犬とかスローモーション二挺拳銃とかウンザリするぐらいの長台詞とか、そう云った類の。
以下、各登場人物や印象に残ったシーンや台詞等のネタバレを含んだ感想になりますので、観終わった方のみ「続きを読む」からご覧下さい。
まだ観てない方は読まないようにお願いします。
まずこの映画の真の主人公である陣内栄さんこと栄おばあちゃん。
一族を取り纏める厳しさと家族を愛する優しさに溢れる正に理想の『おばあちゃん』でしたね。特に中盤のOZのトラブルに対して黒電話と古びた手帳、沢山の手紙の束を使って周囲を説得していくシーンは、台詞や回想シーンを入れたりして説明するよりずっと『陣内栄』と云う女性がどんな色々な過去を経験してきたか、どれだけ色々な人に愛されているかを雄弁に語ってくれます。
しかも、彼女は色々な人々に対して、どうしろこうしろだの具体的に指示したりしない。穏やかに落ち着かせたり、厳しく叱責したりして、ただ『励ます』だけ。
「大丈夫、あんたならできる」
と。
まず最初に泣いたシーンでしたね、ココは。どれだけこの人は、人間を信じていて、人間を愛しているのかと。そして事件が一段落したら「あたしは何もしてやしないよ」とすまし顔。
ああッ、もうッ、すっげぇ可愛いおばあちゃんだナァッッ!!(悶)
これは個人的な見解ですが、栄おばあちゃんって恐らく昔は教師をしていたのではと予想したり。台詞で「先生はよしてくださいよ」云々の件がありますし。大体世間で『先生』と呼ばれる職業なんて教師か医者か政治家ぐらいでしょうし。ただ、栄おばあちゃんは政治家って感じはしないし、教師だったら教え子の中に強力な人脈が作る事も可能っぽいし。どっかの校長や理事長とかが似合いそう。
そして、終盤での遺言シーンではもっと泣かされました。誰も憎もうとせずに何でこんなに家族を愛せるのだろうと。
「一番いけないことは、お腹がすていることと、ひとりでいること」
おばあちゃんが歩んできた人生とこの映画のテーマを顕した名台詞だと思います。
次にこの映画の(一応)主人公である小磯健二。
最初は陣内家の人々やOZの事件にただアタフタするだけの気弱な少年ですが、栄おばあちゃんに出逢って一番変わって成長した存在でしたね。家族関係が悪いというワケではないが、とても希薄で自分に自信が持てない健二が終盤に一瞬でも陣内家の『家族』になり、その応援を受けて勇気を持って立ち向かう。
「お願いしまぁぁすっっ!!」と云う絶叫はそんな応援してくれた陣内家の人達と『家族』になりたいと云う心からの叫びのように聴こえました。
この映画の(一応)ヒロインである篠原夏希。(何
物語の導入役割以外ではどうにも影が薄かった(つーか他の陣内家の面子が強烈すぎるのですが・笑)のですが、終盤ではヒロインらしく大活躍でしたな。
終盤の花札勝負で突然、夏希が選ばれるのに違和感を感じる人も多かったみたいですが、小説版によると陣内家の中で一番花札が強いから選ばれたらしく。
この映画での彼女の役割というのは、前述しましたが健二を『家族』の物語に誘う案内役と、終盤では陣内家や世界に存在する『家族』達を繋げる纏め役っぽく。特に後者に関しては、合間合間に見せる意志の強さやカリスマ性は、流石は栄おばあちゃんの孫娘だと思わせます。まぁ、でもやはり十代の少女らしく思い悩んだり落ち込んだりもしますが。彼女がどんな『おばあちゃん』になるのか楽しみです。
パワー溢れる陣内家の人々について。
本当に愉快で楽しく豪快で繊細で観ている自分もこの家族が囲む食卓に入りたくなります。特に栄おばあちゃんの次男に当たる万助さんの行動力は実に格好いい。スパコンの大電力確保の為にイカ釣り漁船を持ち込むトコは大爆笑しちまいましたが。「おっとこれ水冷だった」→ドッパーンッ。いかん、今思い出しても笑える。そんな豪快大雑把な人ですが、家族の大切さを佳主馬に語るシーンは良かったですね。
栄おばあちゃんがこの映画で『親子』を顕す存在ならば、万助さんは『兄弟』を顕す存在なのかな、と思ったり。
あと、この映画では陣内家の人々が食事をするシーンが多いのですが、これも効果的に使われていましたね。栄おばあちゃんがいた時は種類豊富な豪華なおかずを一つの食卓をみんなで囲んでいて、栄おばあちゃんを失った時には食卓はバラバラになり食事の内容も質素に、そして再び家族が集結する時にはまた一つの食卓をみんなで囲んで、豪華じゃないけど山盛りになったおかずをみんなで食べている。そんな何気ない光景なのに泣きそうになります。
最後にこの映画の真のヒロインである池沢佳主馬。異論は認めない。(ぉ
いやー、マジでこの映画の萌え要素を一身に背負っております、この子(笑)。設定画とかみるとそうでも無さそうですが、実際動いていたり喋っている姿を観ると「あれ……この子、男の子だよ……ね?」と思ったり。声なんか完全に女声だし、日に焼けた細い手足や脇腹や鎖骨がチラ見えするだけで(;´Д`)ハァハァ。
特にクライマックスの泣くシーンは完全にヒロイン顔でしたな。ラストで今まで男の子の姿だったけど実は女の子で健二に惚れてしまうと云うアタマ悪すぎなギャルゲ妄想を展開したのは私だけではないはずだッッ!!(力説)
と、まぁ色々と書きたい事を書き連ねていたら随分と長文章に(汗)。
「ヱヴァ:破」と並んで、スゴク笑ってスゴク泣いてスゴク人と語りたくなる映画ですねコレは。そして、観終わったら故郷の家族と一緒にごはんを食べたくなる映画でした。
全ての家族の食卓に笑顔があらん事を。
●総合評価 95点
もう文句の付けよう無しの個人的傑作。色々と物語のアラを語る人もいますが、そんな事すら無粋と思えたり。ま、普通は私も色々アラ探しをするンですから偉そうな事を云えませんが。絶対2回目も観に行こう。
一族を取り纏める厳しさと家族を愛する優しさに溢れる正に理想の『おばあちゃん』でしたね。特に中盤のOZのトラブルに対して黒電話と古びた手帳、沢山の手紙の束を使って周囲を説得していくシーンは、台詞や回想シーンを入れたりして説明するよりずっと『陣内栄』と云う女性がどんな色々な過去を経験してきたか、どれだけ色々な人に愛されているかを雄弁に語ってくれます。
しかも、彼女は色々な人々に対して、どうしろこうしろだの具体的に指示したりしない。穏やかに落ち着かせたり、厳しく叱責したりして、ただ『励ます』だけ。
「大丈夫、あんたならできる」
と。
まず最初に泣いたシーンでしたね、ココは。どれだけこの人は、人間を信じていて、人間を愛しているのかと。そして事件が一段落したら「あたしは何もしてやしないよ」とすまし顔。
ああッ、もうッ、すっげぇ可愛いおばあちゃんだナァッッ!!(悶)
これは個人的な見解ですが、栄おばあちゃんって恐らく昔は教師をしていたのではと予想したり。台詞で「先生はよしてくださいよ」云々の件がありますし。大体世間で『先生』と呼ばれる職業なんて教師か医者か政治家ぐらいでしょうし。ただ、栄おばあちゃんは政治家って感じはしないし、教師だったら教え子の中に強力な人脈が作る事も可能っぽいし。どっかの校長や理事長とかが似合いそう。
そして、終盤での遺言シーンではもっと泣かされました。誰も憎もうとせずに何でこんなに家族を愛せるのだろうと。
「一番いけないことは、お腹がすていることと、ひとりでいること」
おばあちゃんが歩んできた人生とこの映画のテーマを顕した名台詞だと思います。
次にこの映画の(一応)主人公である小磯健二。
最初は陣内家の人々やOZの事件にただアタフタするだけの気弱な少年ですが、栄おばあちゃんに出逢って一番変わって成長した存在でしたね。家族関係が悪いというワケではないが、とても希薄で自分に自信が持てない健二が終盤に一瞬でも陣内家の『家族』になり、その応援を受けて勇気を持って立ち向かう。
「お願いしまぁぁすっっ!!」と云う絶叫はそんな応援してくれた陣内家の人達と『家族』になりたいと云う心からの叫びのように聴こえました。
この映画の(一応)ヒロインである篠原夏希。(何
物語の導入役割以外ではどうにも影が薄かった(つーか他の陣内家の面子が強烈すぎるのですが・笑)のですが、終盤ではヒロインらしく大活躍でしたな。
終盤の花札勝負で突然、夏希が選ばれるのに違和感を感じる人も多かったみたいですが、小説版によると陣内家の中で一番花札が強いから選ばれたらしく。
この映画での彼女の役割というのは、前述しましたが健二を『家族』の物語に誘う案内役と、終盤では陣内家や世界に存在する『家族』達を繋げる纏め役っぽく。特に後者に関しては、合間合間に見せる意志の強さやカリスマ性は、流石は栄おばあちゃんの孫娘だと思わせます。まぁ、でもやはり十代の少女らしく思い悩んだり落ち込んだりもしますが。彼女がどんな『おばあちゃん』になるのか楽しみです。
パワー溢れる陣内家の人々について。
本当に愉快で楽しく豪快で繊細で観ている自分もこの家族が囲む食卓に入りたくなります。特に栄おばあちゃんの次男に当たる万助さんの行動力は実に格好いい。スパコンの大電力確保の為にイカ釣り漁船を持ち込むトコは大爆笑しちまいましたが。「おっとこれ水冷だった」→ドッパーンッ。いかん、今思い出しても笑える。そんな豪快大雑把な人ですが、家族の大切さを佳主馬に語るシーンは良かったですね。
栄おばあちゃんがこの映画で『親子』を顕す存在ならば、万助さんは『兄弟』を顕す存在なのかな、と思ったり。
あと、この映画では陣内家の人々が食事をするシーンが多いのですが、これも効果的に使われていましたね。栄おばあちゃんがいた時は種類豊富な豪華なおかずを一つの食卓をみんなで囲んでいて、栄おばあちゃんを失った時には食卓はバラバラになり食事の内容も質素に、そして再び家族が集結する時にはまた一つの食卓をみんなで囲んで、豪華じゃないけど山盛りになったおかずをみんなで食べている。そんな何気ない光景なのに泣きそうになります。
最後にこの映画の真のヒロインである池沢佳主馬。異論は認めない。(ぉ
いやー、マジでこの映画の萌え要素を一身に背負っております、この子(笑)。設定画とかみるとそうでも無さそうですが、実際動いていたり喋っている姿を観ると「あれ……この子、男の子だよ……ね?」と思ったり。声なんか完全に女声だし、日に焼けた細い手足や脇腹や鎖骨がチラ見えするだけで(;´Д`)ハァハァ。
特にクライマックスの泣くシーンは完全にヒロイン顔でしたな。ラストで今まで男の子の姿だったけど実は女の子で健二に惚れてしまうと云うアタマ悪すぎなギャルゲ妄想を展開したのは私だけではないはずだッッ!!(力説)
と、まぁ色々と書きたい事を書き連ねていたら随分と長文章に(汗)。
「ヱヴァ:破」と並んで、スゴク笑ってスゴク泣いてスゴク人と語りたくなる映画ですねコレは。そして、観終わったら故郷の家族と一緒にごはんを食べたくなる映画でした。
全ての家族の食卓に笑顔があらん事を。
●総合評価 95点
もう文句の付けよう無しの個人的傑作。色々と物語のアラを語る人もいますが、そんな事すら無粋と思えたり。ま、普通は私も色々アラ探しをするンですから偉そうな事を云えませんが。絶対2回目も観に行こう。
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コメント
紫光 | URL | KTts6b96
Re: 「サマーウォーズ」。
いつも寄らせていただきますが、コメントはじめてです。
こちらのレビュー(ネタばれ以外)を読んで、映画本編が気になり、
先日やっと見てきました。
半分眠くなりつつも、レイトで観た感想は、眠気も忘れる
素晴らしい映画でした。
個人的に花札のクライマックスシーンは思わず拳を握りました。
現実のつながりもネットのつながりも大事だなぁと。
これからも映画レビュー楽しみにしています。
それでは。
( 2009年08月21日 21:31 [編集] )
西山英志 | URL | /wfpEG4s
Re: 「サマーウォーズ」。
>紫光さん
どうも、コメントありがとうございます。
私もラストの花札シーンは大好きですが、それより中盤の栄おばあちゃんの電話シーンや遺言のところで泣いたクチだったりします。
偏見ばっかのレビューですが、楽しみにしていただけると幸いです。
( 2009年08月25日 00:09 [編集] )
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