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http://i-basterds.com/久しぶりの「キル・ビル」(特にvol.1)や「デスプルーフ」みたいなタランティーノ監督の趣味丸出し悪ノリ作品ではなく、「レザボアドックス」「パルプ・フィクション」の系譜に連なる正統派タランティーノ節をジックリと煮詰めて、理知的に整理し、タランティーノ作品初心者でも楽しめるようにされた群像活劇で御座いました。
まぁ、ソレでも相変わらずマニアックなネタ満載なのですが(苦笑)。
表向きは戦争映画ですが、その根底は完全にマカロニ・ウェスタン。つかサム・ペキンパー作品へのオマージュが多かったような気がしますね。「わらの犬」とか「戦争のはらわた」辺りの。私がその辺ぐらいしか観ていないってのもあるかも知れないケド(苦笑)。
タランティーノ作品ではお馴染みの長台詞劇と暴力描写も健在。ただ、暴力描写については少し大人し目になっているかなとも感じたり。個人的に一番キツかったのがバット撲殺のシーンぐらいかな。あのシーンは直前の登場シーンのインパクトもあってナカナカ面白かったし。
長台詞劇は第4章の地下居酒屋のシーンが素晴らしかった。観た人によってはこの居酒屋のシーンが長すぎて退屈だと云う人もいるみたいですが、私は大好きですね。最初はゲームや酔っぱらいの与太話がグダグダと始まって、時間が経過する毎に増していく緊張感、そして拳銃を突きつけ合っての数秒の乱射戦。誰が死ぬのか生き残るのか解らないドキドキ感は他の映画では味わえないモノがありますわ。
そして、この作品で感心したのはタランティーノ監督の映画に対する並々ならない愛情。……そんなモン、他の作品にもあるじゃねーか、と云われるかも知れませんが、今回はチョット違う。「映画」そのものが物語のクライマックスであり、最後の武器であり、テーマにもなっているトコ。第二次大戦時のプロパガンダ映画のくだらなさ、映画の道具を使った復讐方法、そして最後の戦いの舞台となるのは小さいながらも美しい映画館。ホンマに映画が好きなンだねぇ、と思わせてくれます。
物語的にはナチに惨殺されたユダヤ人のヒロインと、ナチを狩る為に編成されたアメリカの特殊部隊達の二つの視点から話は進み、ナチの高官達が集まるプロパガンダ映画プレミア上映会への襲撃作戦へと繋がっていくのですが、もう少しドンデン返しっぽい話になるかと思っていたのですが、アッサリと話が進んでしまって拍子抜けしてしまったり。まぁ、過剰な期待をしていた所為もあるのかも知れませんが。あとラストの締め方もタランティーノらしいと云えばソレまでですが、もう少しフォローがあっても良かったような。
配役的には予告編や劇場ポスター等ではブラッド・ピットが一番目立っていますが、映画本編では全然目立っておりません(笑)。いや、それなりに頑張ってはいるのですが、他の俳優達の強烈な演技でどーにも霞んで観えてしまうっつーか。
中でも一番素晴らしかったのはナチのハンス・ランダ大佐役のクリストフ・ヴァルツ。この人の話し方や手の動きで表現する演技が実に印象深い。口の中にケーキ詰め込みながらペラペラ流暢に喋ったり、話してる最中の掌や指の舞台劇のような動作がイヤミじゃなくてキレイと云いますか。
ヒロインのショシャナ役のメラニー・ロランも安っぽいラブロマンスなんかに堕ちない、鉄の意志を持つ復讐鬼に徹していたトコが良し。そんな冷徹に徹していたからこそラストの結末が印象的になったような気がしますな。
他にも色々と個性的な俳優達が多いですが、その演技の面白さはスクリーンで確認して貰った方がイイかも(苦笑)。
正直、タランティーノ作品ってのは好き嫌いが激しい作風になるのですが、今作は比較的万人に受け入れやすい内容ではないかな、と。
少しでも興味が湧いたのなら観に行くのをオススメします。映画バカとして(笑)。上映期間も短そうだし。
●総合評価 75点
オマージュの元ネタを知っているともっと面白くなったかも知れませんがマカロニ・ウェスタン作品自体をあまり観てない私ですので、この点数で。バカ映画好きなら絶対観て損は無し。
【関連リンク】
「イングロリアル・バスターズ」人物&キーワード辞典。(eiga.com)
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